「.mobi」の提案についてJPRSがICANNに提出したコメント(日本語参考訳)
株式会社 日本レジストリサービス
2004年 4月30日
「.mobi」の提案についてJPRSがICANNに提出したコメント(日本語参考訳)
▼JPRSのスタンス
JPRSは、JPドメイン名のレジストリかつDNSオペレータとして、ドメイン名の運用に関するサービス的、技術的なリーダシップを発揮し、インターネットの上での混乱やトラブルを未然に防ぐ役割も負っている。
JPRSは、今回の各提案について前述の立場から検討した結果として、以下のコメントを提出する。ICANNが我々のコメントを真摯に検討してくれることを期待する。
なお、TLDの新設は、インターネットにおける新たな価値の創造とコミュニティの利益に働くこともあれば、コミュニティに対して不要な混乱と不利益を招く危険性もある。過去のTLD新設の結果に対する評価がICANNにおいて十分になされた上で、今回の申請に対する導入是非の判断が行われることを切に望むもの である。
▼.mobiについて
携帯電話をはじめとするモバイル機器からのインターネット利用が進んでいる国の一つである日本の経験と実情を踏まえ、以下の点から、.mobiは新設の必然性が認められないだけでなく、他のTLDのモバイル分野での利用を阻害するため、ユーザにとっての利益にならないと考える。
このため、我々は.mobiの新設に反対する。
1. インターネットの不要な分断
- モバイル機器は、ドメイン名を用いてインターネットにアクセスするレイヤにおいて特別視されるデバイスではない。技術の進歩により、サービスとコンテンツは、PCとモバイル機器の境界をなくしつつある。
- .mobiの申請理由に謳われている技術的必要性は、現在のドメイン名空間において、十分に実現可能なものである。
- .mobiは、ドメイン名によるコミュニティの形成ではなく、機能的に独立した部分的インターネットを形成する。しかし、インターネットは1つであり、モバイルインターネットという別のネットワークが存在するわけではない。
- インターネットの上では、従来のサービスも、モバイル機器などへの新しいサービスも、シームレスに提供されることが原則であり、これこそインターネットを現在の成功に導いた根本的原則であると、我々は確信している。
- .mobiはこのような「1つのインターネット」の思想に反し、インターネットを端末という側面から分断しようとするものである。
2. コンテンツ提供者の負担
- 日本では、携帯電話をはじめとするモバイル機器からのインターネット利用はすでに一般的なものになりつつあり、全インターネットユーザの4割以上が携帯インターネットのユーザである。携帯インターネットの契約数では世界1位となっている。
- モバイル用サービス・コンテンツの提供は、既存のドメイン名空間を活用して、すでにPCからのインターネット利用と不可分なまでに融合している。
- このような状況下、.mobiの新設と、それによるモバイル用サービス・コンテンツの.mobiへの収容は、既存のドメイン名を使ってサービスを行っている多くのモバイルコンテンツ提供者に対し、大きな負担を強いるものである。
株式会社 日本レジストリサービス
代表取締役社長 東田幸樹